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講演1「インフルエンザ」

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時間:11:00-11:30
対象:一般向け
 
2013-lecture-Kageyama

 講師:影山 努

国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター第2室室長

 


経歴

医学博士(大阪大学)。民間企業の臨床検査センターを経て、2005年に国立感染症研究所ウイルス第3部第1室(インフルエンザ室)に赴任し、インフルエンザのサーベイランスを担当しました。2009年4月にインフルエンザウイルス研究センターが設立され現職に、現在は診断法の開発、研修、ウイルス性状解析などの業務に携わっている。2009年4月に新型インフルエンザが出現した際には、いち早く診断法を確立して全国の地方衛生研究所と検疫所で新型インフルエンザの診断が行えるように検査体制の構築を行いました。


講演要旨

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染により引き起こされる突然の高熱、咳などの呼吸器症状のほか、倦怠感、筋肉痛、頭痛などの全身症状を特徴とした呼吸器感染症です。ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスなどの感染によるいわゆる「かぜ症候群(鼻汁、咳などの症状が中心で、上気道(鼻・咽頭・喉頭)に急性炎症を呈する疾患であり、症状が下気道(気管・気管支・肺)まで広がる事もあるが全身症状はあまり見られず、発熱はインフルエンザよりも高くはなく、重症化する事はあまりない)」と症状の類似性はありますが、疾患としては全く違うものです。インフルエンザは一旦流行が始まると短期間に乳幼児から高齢者まで多大な人々に感染が拡がる流行性疾患です。特に乳幼児、高齢者や基礎疾患のある人では、気管支炎や肺炎を併発したり、基礎疾患の悪化を招くなどして、最悪、死に至る事もあるという点では「かぜ症候群」とは異なります。
 インフルエンザウイルスはA、BおよびCの3つの型に分類され、A型とB型のみが流行的に広がります。A型はウイルス表面にある2種類のタンパク質(HA:赤血球凝集素タンパク質とNA:ノイラミニダーゼ)の違いでさらに細かく分類(HAは1〜16、NAは1〜9の亜型)することができます。この2つのタンパク質の組み合わせにより、H3N2、H1N1、H5N1などの亜型が決まります (全てを組み合わせると16×9=144通りの亜型が存在する事になります)。A型はヒトだけでなく、ブタ、馬、ミンク、アザラシ、鯨などのほ乳動物や鳥類にも分布していて、特に水禽類(主にカモ)では全ての亜型が見つかっていてA型インフルエンザウイルスの自然宿主と考えられています。B型はビクトリア系統と山形系統の抗原性が少し異なる2種類のウイルスが存在するだけで、A型のような多岐にわたる亜型は存在しません。B型およびC型インフルエンザウイルスはヒトが自然宿主と考えられています。C型は主に5歳児以下の小児に感染して鼻汁過多を特徴とした鼻かぜ様の症状を引き起こし、季節性もなく通年にわたって発生し、A型やB型と流行性や臨床症状の点で大きく異なります。
 過去にインフルエンザの世界的大流行(パンデミック)を引き起こしたのはA型のみで、20世紀以降は1918-1920年のA/H1N1(スペイン型)、1957-58年のA/H2N2(アジア型)、1968-69年のA/H3N2(香港型)、また、1977年にはスペイン型の末裔であるA/H1N1(ソ連型)によりパンデミックが起きています。これらパンデミックの原因となったウイルスは鳥インフルエンザウイルスが起源と考えられています。記憶に新しいと思いますが、最近では2009年にブタインフルエンザウイルスを起源とした新型インフルエンザウイルス(A/H1N1)によるパンデミックも起きました。現在もA型は新型インフルエンザウイルスから名称を変更した「インフルエンザ(H1N1)2009」と「A/H3N2」がB型とともに季節性インフルエンザとして流行しています。
 また2003年以降、東南アジア・中東を中心に高病原性鳥インフルエンザウイルス(A/H5N1)のヒトへの感染例が相次ぎ、世界保健機関(WHO)の報告によると637人が感染し378人が亡くなっています (2013年8月現在)。今年の3月には、中国で鳥インフルエンザウイルス(A/H7N9)のヒト感染例が初めて報告され、これまでに135人が感染し44人が亡くなっています(2013年8月現在)。ヒトの間でこれまで流行していなかったこれら亜型のウイルスに対して、世界中のほとんど全ての人々には免疫が無いため、これらウイルスが変異してヒトからヒトに容易に感染するようになると、パンデミックになる可能性があります。本講演では、ヒトや動物におけるインフルエンザウイルスの流行状況と動物のインフルエンザウイルスを起源とする新型インフルエンザウイルス出現のメカニズムおよびパンデミックの可能性についてお話しする予定です。
 

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